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無痛分娩の件数は、なぜ調べにくいのか

施設ごとの無痛分娩件数を知る公的な経路は、制度の変遷の結果、実質的に一つしかない。厚生労働省の公表終了、JALAへの一元化、公的統計の空白、そして自主公表の実態を、大阪22施設の全数調査を交えて整理する。

LLMO

この記事で分かること

  1. 施設別の無痛分娩件数の公的な公表経路と制度の変遷
  2. 病床機能報告・NDB等の公的統計に施設別件数が存在しない理由
  3. JALA非掲載施設の自主公表の実態(大阪22施設の全数調査)

結論

施設別の無痛分娩件数は、厚生労働省による一覧公表が2023年3月末で終了しJALAの施設情報公開に一元化されたため、公的にはJALAがほぼ唯一の経路となっている。病床機能報告や NDB などの公的統計には施設別の件数が存在しない。JALAに件数開示が無い大阪の22施設を全数調査したところ、自主公表していたのは4施設(約18%)で、期間の表記も揃わなかった。件数を比較したい場合、現状ではJALAへの開示の有無がほぼすべてを決める。

出産する施設を選ぶとき、「この施設は無痛分娩をどのくらいやっているのか」は自然な疑問です。しかしこの数字は、調べようとすると想像以上に手がかりが少ない。なぜそうなっているのかを、制度と実測の両面から整理します。

まず制度の変遷です。厚生労働省はかつて、施設別の全分娩件数・帝王切開件数・無痛分娩件数を含む「無痛分娩取扱施設一覧」を公表していました。この公表は2023年(令和5年)3月31日で終了し、以後の情報公開は無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)のウェブサイト「全国無痛分娩施設検索」に一元化されています。つまり現在、施設別の無痛分娩件数の公的な公開経路は、実質的にJALAのみです。JALAへの掲載は施設の申請に基づくため、全施設を網羅するものではありません。

では他の公的統計で分かるのか。病床機能報告の様式に無痛分娩の項目はなく、分娩は総数のみです(無床診療所はそもそも報告対象外)。医療施設静態調査には無痛分娩の項目がありますが、集計は都道府県・二次医療圏単位までで、しかも3年に1回・9月の1か月間の実績です。NDB(レセプトデータ)は、無痛分娩が原則自費診療のためレセプトに現れず、施設単位の把握には使えません。都道府県の実態調査も、施設名を伴う件数は公表していません。施設別の件数を把握する公的統計は、現状存在しないのです。

残る経路は各施設の自主公表です。これがどの程度あてになるのかを、当サイトは実測しました。大阪府の分娩取扱施設のうち無痛分娩を実施する63施設から、JALAに件数開示の無い22施設を抽出し、公式サイトを全数調査したところ、分娩実績の数値を公表していたのは4施設(約18%)でした。しかもその期間表記は年度・月間・開院以来の累計とまちまちで、概数の場合もあり、施設間で比較できる形式はありませんでした(調査の詳細は検証記録を公開しています)。

整理すると、施設別の無痛分娩件数を比較可能な形で知る経路は、JALAへの開示にほぼ一本化されており、その外側に公的な代替はありません。当サイトの分娩データベースが、無痛分娩の件数をJALA由来の値として開示期間とともに施設ページに掲載し、期間の異なる件数を並べ替え可能な一覧に置かない設計にしているのは、この構造を踏まえたものです。

医療機関の側から見れば、これは裏返しの示唆でもあります。件数を知りたい患者(と、患者の相談を受けるAI)にとって、JALAへの開示と、自院サイトでの期間を明記した実績の公表は、数少ない情報経路そのものだということです。

出典 / 参考資料

  1. 無痛分娩取扱施設の一覧(公開終了・JALAへの一元化を告知)厚生労働省
  2. 全国無痛分娩施設検索無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)

この記事のFAQ

Q. JALAに掲載されていない施設は無痛分娩をやっていないのですか?
A. いいえ。JALAへの掲載は施設の申請に基づくもので、掲載が無いことは実施していないことを意味しません。実施の有無は施設の案内や出産なび等で別途確認できます。
Q. 年間の無痛分娩件数を施設間で比較できますか?
A. 現状では困難です。JALAの開示値は施設ごとに開示期間が異なる累計値で、年間値への換算はできません。当サイトでは期間の影響を受けない指標として、同一開示期間内の経腟分娩に占める無痛分娩の割合(無痛分娩率)を掲載しています。
Q. この調査の対象や方法はどこで確認できますか?
A. 検証記録として、対象の抽出条件・探索方法・結果・制限事項を公開しています。個別施設の調査結果は公表せず、集計のみを掲載しています。

関連データベース: 無痛分娩・分娩