検証記録観測日: 2026年6月7日

大阪の美容クリニック100院 AI検索対応調査(第1報)

大阪府の美容医療施設100件の公開サイトを対象に、robots.txt・AIクローラー許可状況・llms.txt・JSON-LD構造化データの有無と種別を外形的に調査した第1報。AIに読まれる「扉」は広く開いている一方、医療特化の構造化データ等の作り込みは2割前後の先行層に限られる、という技術的実態を報告する。

要旨

背景 ChatGPTやGoogleのAI検索が、患者の医療機関選びの一手段になりつつある。AIがあるサイトを参照・引用するには、その前段として、AI向けのクローラーがページに到達でき、内容を機械可読な形で解釈できることが求められる。しかし美容医療施設におけるこの「技術的な土台」の整備状況は、これまで体系的に把握されていない。

方法 大阪府の美容医療施設100件を対象に、各施設の公開サイトについて、robots.txt の有無、AIクローラーの許可状況、llms.txt の有無、JSON-LD 構造化データの有無と種別を、外から確認できる公開情報だけを見て調べた。取得対象は公開情報に限り、認証や非公開領域へのアクセスは行っていない。

結果 到達できた99件のうち、AIクローラーを全面拒否していた施設はわずか2件(2%)であった。robots.txt は83%、JSON-LD構造化データは78%が設置済みで、技術的な土台の基本は広く普及していた。一方、「医療機関である」と明示する構造化データ(MedicalClinic)は21%、患者の疑問に対応する構造化データ(FAQPage)は6%にとどまった。llms.txt は17%が設置していたが、その大半(13件)はWordPress用ツールによる自動生成であり、意図的に整備されたとみられるものは4件であった。

結論 大阪の美容医療施設は、AIに読まれること自体はほとんど拒んでいない。しかし、AIに自院の専門情報を正しく伝えるための作り込みは、2割前後の先行層に限られる。扉は広く開いているが、AIに向けた案内板を立てている施設は一部にとどまる、というのが現状である。


背景

AI検索の利用者は、従来の検索とは異なる行動をとることが報告されている。一回のやり取りに数分を費やし、より長く具体的な質問を重ね、複数の選択肢をじっくり比較する傾向がある。美容医療のように高額で慎重に選ばれる分野では、こうした層が重要な見込み患者となりうる。

ここで前提となるのが、技術的な土台である。AIがあるサイトの情報を参照・引用するには、まずAI向けのクローラー(情報を収集するプログラム)がそのページに到達でき、次にページの内容を機械が解釈できる形で受け取れることが必要になる。コンテンツの質を論じる以前に、この土台が崩れていれば、そもそもAIの土俵に上がれない。

本調査は、この土台が業界でどの程度整っているかを、外から確認できる範囲で把握することを目的とした。第1報では技術的実態の把握に絞り、実際にAIに引用されるかどうか(可視性)との関係は第2報で扱う。

方法

対象 大阪府の美容医療施設100件。Google Places(地図検索)で「美容クリニック 大阪」「美容皮膚科 大阪」「美容外科 大阪」等の複数キーワードを用いて施設を収集し、重複を除いて上位から100件を抽出した。患者が実際に検索してたどり着く施設群を母集団とすることを意図しており、実在する全施設の網羅は目的としていない。

調査項目 各施設の公開サイトについて、以下を外形的に確認した。

  • robots.txt(クローラーへの指示を記したファイル)の有無
  • AIクローラー10種(GPTBot, OAI-SearchBot, ChatGPT-User, ClaudeBot, anthropic-ai, Claude-Web, PerplexityBot, Google-Extended, CCBot, Applebot-Extended)を全面拒否しているか
  • llms.txt(AI向けにサイトの要点を案内する新しい仕様のファイル)の有無
  • JSON-LD(サイトの内容を機械可読な形で伝える構造化データ)の有無と、その種別(@type)
  • トップページの応答時間とステータス(技術的安定性の補助指標)

判定の基準 robots.txt の判定では、サイト全体の拒否(Disallow: /)のみを「全面拒否」として計数し、一部パスのみの拒否は実質許可として扱った。bot対策等で到達できなかった施設は、脱落例として集計から除外した(到達100件中99件が解析対象)。

規模区分 各施設を口コミ件数を代理指標として、大規模(300件以上)・中規模(50〜300件未満)・小規模(50件未満)に区分した。これは施設の実規模と必ずしも一致しないが、対応状況の傾向を見るための便宜的な区分である。

結果

到達できた99施設について、主要な指標は次のとおりであった。

指標該当数割合
robots.txt 設置82 / 9983%
AIクローラーを全面拒否2 / 992%
llms.txt 設置17 / 9917%
JSON-LD 構造化データ 設置77 / 9978%
── うち医療特化(MedicalClinic)21 / 9921%
── FAQ構造化(FAQPage)6 / 996%
トップページ平均応答時間0.77秒

100施設のうち1施設はトップページに到達できず、集計から除外した。

所見1:AIへの「扉」はほぼ開いている

AIクローラーを全面拒否していたのは、99施設中わずか2施設(2%)であった。一般のウェブクローラーへの指示である robots.txt 自体は83%が設置しており、サイト運用の基本は広く整っている。この2施設の拒否設定は、地図最適化(MEO)を担う業者による機械的な設定の可能性があり、施設が意図的にAIを締め出したものとは考えにくい。業界として、AIに読まれること自体を拒んではいないと言える。

所見2:llms.txt は17%、ただし大半は自動生成

llms.txt の設置は17施設(17%)であった。一般のウェブサイトでの設置率が1%に満たないことを踏まえると、数字としては高い。しかし、設置済み17件の中身を実際に確認したところ、13件は「Generated by All in One SEO」と記され、WordPress用の普及SEOツールが自動生成したものであった。施設が意図して用意したというより、ツール導入の副産物である。ツール署名がなく独自に整えた形跡があるのは4件にとどまった。設置率17%という数字だけを見て「先進的な層が2割近い」と解釈するのは正確でない。意識的に取り組む層は、実質ひと握りである。

所見3:構造化データは「数は多いが、医療特化は2割」

JSON-LD構造化データは78%が設置済みであった。ただし内訳を見ると、最も多いのは Organization(55件)、WebSite(55件)、BreadcrumbList(54件)といった、制作会社が標準で組み込む汎用的な型である。これに対し、「ここは医療機関である」と明示する MedicalClinic は21件、患者の疑問に答える FAQPage は6件にとどまった。構造化データの「数」は普及しているが、AIに医療の専門情報を正しく伝えるための作り込みは、2割前後の先行層に限られている。

所見4:規模が大きいほど、対応がやや進む

規模別に見ると、llms.txt の設置率は大規模20%、中規模18%、小規模0%と、規模が大きいほど高い傾向がみられた。JSON-LDも大規模82%、中規模73%、小規模78%と、大規模で相対的に高い。体力のある施設から先に動き始めている構図がうかがえる。

規模施設数robots.txtllms.txtJSON-LD
大規模4582%20%82%
中規模4484%18%73%
小規模978%0%78%

考察

全体像をひとことで言えば、扉は広く開いているが、AIへの案内板を立てている施設は一部にとどまる、ということである。

AIクローラーを締め出している施設はほぼなく(所見1)、技術的な土台の基本も普及している(robots.txt 83%、JSON-LD 78%)。つまり、AIに読まれる準備という最低限の入口は、業界全体でおおむね満たされている。

しかし一歩進んで、「AIに何を、どう伝えるか」という作り込みの段階になると、対応は急に薄くなる。医療機関であることを構造化データで明示する施設は2割、患者の疑問に構造化して答える施設は1割に満たない(所見3)。llms.txt の数字も、中身を開けば大半が普及ツールの自動生成で、意識的な整備は限られる(所見2)。

この「土台はあるが、専門情報の作り込みは薄い」という状態は、裏を返せば、早期に着手すれば差別化の余地が大きいことを意味する。多くの施設が汎用的な構造化データで止まっているなかで、医師情報・治療情報・患者の疑問への回答を、AIが正確に解釈できる形で整える施設は、まだ少数である。

ただし、本調査は技術実装の有無を確認したにすぎない。これらの実装が実際にAIへの引用につながるかは、本調査では検証していない。土台の整備はAI可視性の前提条件ではあるが、それ自体が引用を保証するものではない。

限界

本調査にはいくつかの限界がある。

第一に、対象は大阪府の100施設に限られる。目標件数に大阪のみで到達したため、神戸・京都など他地域は含まれておらず、全国や他地域への一般化には注意を要する。

第二に、外形調査のみである。サイトの内容の質や、実際にAIに正しく引用されるかは検証していない。これは第2報の課題とする。

第三に、llms.txt は存在と中身の署名を確認した段階であり、その記述が各施設の情報を適切に反映しているかまでは精査していない(設置17件すべてが実在するテキストファイルであることは確認済み)。

第四に、規模区分は口コミ件数による代理指標であり、施設の実規模とは必ずしも一致しない。

第五に、bot対策等で到達できなかった施設を分母から除外しているため、選択バイアスの可能性が残る。

結論

大阪の美容医療業界において、AIに読まれるための技術的な扉は、すでに広く開いている。一方で、AIに自院の専門情報を正しく伝える作り込みは、2割前後の先行層に限られる。土台の普及と、専門情報の作り込みの薄さ——この二つの落差が、現時点での業界の実態である。AI検索が患者の選択に影響を持ち始めるなかで、この落差を埋めることが、早期の差別化要因となりうる。


次報の予告

第2報では、本調査の技術的実装と、実際のAI検索における可視性(ChatGPT・Google AI・Perplexity等で実際に引用・言及されるか)との関係を検証する。技術的土台の整備が、AIに参照される結果にどう結びつくのか——あるいは結びつかないのか——を、同一施設群で追う予定である。

※ 本調査は公開情報のみを対象とした集計です。個別の医療機関を評価・格付けするものではなく、施設名は掲載していません。

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